Dream11.【Bullet and Blade】 相手を倒すべき方法は考え付いた。 後はそれを実行するだけ。 だが彼の考えた方法はあらゆる意味で度胸が必要とされる行動。 だが長いこと悩んでいる暇は無い。 敵である相手は気の長い方ではないのだから。 それにチャンスだってそれほど多く訪れるはずも無い。 一発勝負。 彼は迷うことなく自ら敵に向かって特攻する。 こちらから攻めれば相手が動かないのは今までの戦いで彼は知っている。 敵は常にカウンターを狙っている。 だが攻撃に移る瞬間、隙が出来上がる。 しかしその隙が極めて細く、銃弾を通すのが至難の業。 ギリギリまで撃たない。 至近距離、それはすでに銃を扱うための間合いではなくなっている。 敵の間合いであるのに、彼は一向に発砲しようとはしなかった。 しかしそれが彼の狙いでもあった。 敵は彼の行動を怪しむ素振りすら見せず、彼の動きに合わせて盾を振るう。 横薙ぎの一撃は強風を巻き起こしながら彼を捉えようと迫る。 彼は事前に決めていたように急ブレーキ、反動を何とか押し殺して後ろへと跳ぶ。 敵は彼を追うように両方の盾を突き出してサイのように突進。 それこそが彼の待っていた好機。 今回の敵は盾を有する敵、剣を有する敵の両方に共通して防具を装備していないということ。 身体を守るものは両手に持っているもの以外に薄手の生地しか纏っていない。 彼にとってはそれだけが狙いなのだ。 銃弾が通らない盾以外に狙えば何処でも敵に当たり、致命傷となりえる。 神経を研ぎ澄ませ、相手の動きを見極める。 迫り来る盾の先端に視線を合わせ、避けるべきタイミングを見出す。 刃に恐怖を感じつつ、彼は決して目線を逸らさない。 そして刃が彼の身体に到達する寸前に彼は行動を開始する。 膝の力を自然に抜かし、一気に高度を下げる。 こうすることで敵には彼が一瞬にして消えたように見えるはず。 だが驚くべきはここまで状況に適応している彼よりも、一瞬にして状況を理解し行動に移る敵のほうである。 今までよりも踏み込みを強くし、瞬間的に速度を上昇させる。 それによって彼の見計らったタイミングはずれてしまった。 刃が彼の左脇腹から肩まで一気に切り裂く。 飛び散る血飛沫、崩れるように倒れようとする彼。 だが彼の瞳は決して折れてはいない。 倒れる前に彼は銃をある場所に狙い、引き金を引く。 鳴り響く銃声は5発、命中したのは3発。 場所は脚部、銃弾によって撃ち抜かれた足に力が入るはずも無く敵は前のめりに倒れ伏す。 走る激痛を抑え、彼は跳ね起き最高のチャンスを物にせんと踏ん張る。 チャンスは自分自身で起こし、自分の手で掴み取らなければ意味が無い。 他人に期待した所で彼の場合は敵、つまり死しか与えてはくれないのだから。 滴る血、流れていく生命を無視して彼は立ち上がり銃口を再び敵に向ける。 無防備な敵の背中に彼は無常に銃弾を浴びせる。 背中を穴だらけにされて生きていられるはずが無い。 敵の状態を戦闘不能と判断した彼は次なる標的へと銃口を向ける。 だがこの一連の行動にミスがあったなど彼自身、思いもよらなかった・・・・。 |