Dream10【Last extreme battle】


彼と一緒に突入した最後の舞台。

敵は今までに比べたら格段に楽な2名。

だが油断することは死へと繋がる。

生きる為に、命を繋ぎ止める為にも全力で相手をしないといけない。

たとえ弱者であろうと本気で挑むのが彼女の心情である。

それがたとえ強者であっても逃亡することは許されない。

この場所から脱出するには絶対に戦わなければいけない相手なのだから。

2対1ならば絶対に勝てるのだと彼女は本気で思っていた。

だが相手も甘くは無い。

彼の進路を塞ぐように両手に盾を持った敵が立ち塞がる。

2対1が圧倒的に不利であることを敵も理解していた。

だったら勝つ為にどちらかが勝ち、苦戦している方へと援護に向かうのがセオリー。

だから彼女は両手に剣を携えた敵と向き合い、何としてでも勝つことを心に決めている。

槍を扱う者と二刀流を扱う者。

攻撃に秀でた者同士の戦いは熾烈を極めることが容易に想像できる。

踏み込みは同時。

駆ける速度、最初の一撃。

力、速度、技量共に両者の実力は均衡している。

だがある一点において彼女よりも敵が優れているものがある。

それが二刀流。

「・・・・対応し切れない」

一旦距離を離して先程の攻防を分析する。

確かに彼女の実力は敵と均衡していた。

だが二刀流による差が意外と大きいことに彼女は気づいた。

一つを捌く間にもう一方の刃が彼女を襲う。

彼女の武器が一つだけなのに対して敵の武器は二つ。

一つで実力が均衡しているのであれば、さらに実力の均衡した刃を躱せることは至難の業。

再度の突撃。

彼女が優るとしたら、槍の特徴である突き。

踏み出した足が大地を沈め、引き絞った腕が一気に力を解き放つ。

放たれた矢は敵の心臓へと直進する。

当たったという確信が彼女の思考に流れてくる。

だが逆に外れたという無念も同時に流れてくる。

心臓の前、十字に交差された剣によって彼女の渾身の刺突は防がれた。

自信を持って撃った一撃だけに彼女の心は大いに揺れ動く。

死角より襲い来る敵の刃。

考えるよりも感覚で彼女は間一髪避けることが出来たはず。

だが避け切れなかった。

鮮血が飛び散り、彼女の左脇腹が紅く染まる。

彼女は傷口を手で押さえながら再び敵から距離を取る。

今回の敵に共通していることは距離を取ろうとしても追い討ちを掛けてこない事。

まるでいたぶるように2人を追い詰めていく。

「深くはないな」

触ってみた感触で傷口の大きさを知る。

血が派手に出ているだけで深手だというわけでもなかった。

だがいずれにせよ体力の低下は否めない。

血は人間の動かすために必要不可欠な液体。

それが減少するということは運動量もまた減ってしまう。

だが彼女の思考はいたって前向きであった。

時間を掛けれないのならば、時間を掛けずに敵に勝てばいい。

敵の動きも彼女はようやく読めるようになってきた。

まだ不可解な部分があるが彼女にとって少しでも読めるのであればそれは好機。

だから彼女は戦法を変えることを決めた。

今の猪突猛進では絶対に目の前に敵には勝てない。

もっと複雑に、さらに速い攻撃を彼女は望む。

さらなる演舞は熾烈さを増し、槍と剣の戦いを盛り上げるであろう・・・・・。