Epilogue.【Relieve Gospel】



閃光が瞳を焼くかのように視界を白く染め上げる。

だがその後に待っていたのは正反対の漆黒なる光景。

何も見えず、何も聞こえず、何も感じることが出来ない。

孤独がこれほど怖いと彼女は初めて気づかされた。

彼と一緒の戦いで、彼の存在が大きかったことも要因となっているのだろう。

だがそんな孤独もすぐに無くなる。

漆黒の世界に一筋の光が差し込み、闇を溶かしてくれるから。

闇が完全に消え去った時、彼女の瞼は完全に開かれ真っ白な天井を瞳に映している。

消毒薬の匂いがきつく、眉間に皺を寄せながら周りの様子をゆっくりと眺める。

白いベッド、白い壁、包帯に巻かれた身体、医療機器。

病院という単語が頭に浮かぶも深く考えることが出来ない。

何かが思考の邪魔をしている。

全身に負っている大怪我の所為かもしれない。

しかしそれ以上のもっと重大なことを彼女は忘れている気がしていた。

その忘れている記憶を探るために、彼女は過去を思い出そうとする。

休日に何とか両親を説得して1人での外出を許可してもらった。

とりあえずウィンドウショッピングを楽しもうと歩道を歩いていたところにトラックが突っ込んできた。

彼女は何も分からずに、トラックがぶつかったことによって発生した散乱物によって大怪我を負った気がする。

やはり怪我をした時の様子はおぼろげで自信が無い。

そして大怪我をした自分は病院に運ばれたはず・・・・・。

だけど何か重大なことを彼女は忘れており、思い出すことが出来ないと感じている。

人生で最大の出来事であり、大きな罪を背負ったことであり、大切な人と離れてしまった気がする。

勝手に瞳から涙が溢れてくる。

涙を流す理由が分からないが、心にあるモヤモヤが無くなってくれるかもしれないという期待がある。

だが消えるとは全く思ってなどいなかった。

後姿しか思い出せない大切な人と会うことこそが解決する方法なのだから。

全てを忘れ、何かを思い出そうとする彼女の物語は此処で停滞する。

彼女の物語が再び加速するのは彼と会えた時であろう。

それまで彼女は平穏は味わう・・・・・。


   〜She Side END〜