Dream04【collaboration the front】


あれから何度か殺し合いを行った。その所為か段々と人を殺すということに慣れ始めてきた。

感覚が狂わされいくことに気づきながら、抗えぬ感覚に2人は苦悩する。

繰り返しの作業は慣れてしまえば早く終わる。

人である甲冑や鎧を着込んだ相手のとの戦いも2人は淡々と行うようになっていた。

怯えることもなく、殺すことに恐怖を覚えることもなく、ただ殺すことだけを目的に。

扉を開けて、敵ではない人物が出てくることを2人はすでに諦めていた。

扉を開けて、出てくるのが自分の命を奪う敵ばかりでは味方がいることを信じられるはずもない。

扉を開けて、これ以上絶望や落胆を感じたくはなかったのだろう。

だからこの場所には自分一人しかいないと思い込むようになってきた。

だがその思い込みは間違いである。

この場所から抜け出すための次へと続く扉を開けた時、2人は違和感を感じたのだから。

扉を開けて、向こう側には同じように壁を開けた姿勢でこちらを見ている女性。

扉を開けて、向こう側には同じように壁を開けた姿勢でこちらを見ている男性。

2人は出会い、合流する。疑いを抱いたままに。



最初に動いたのは彼女。挨拶でも、歩み寄るでもなく戦闘態勢のまま突っ込む。

友好的なものは一切なく、殺意を込めた行動。

だが彼もそんな行動に戸惑いを感じはしない。

距離は最初から離れ、彼にとってはもっとも有効的な間合いであった。

だから構え、撃つ。

銃弾は3発放たれた。狙いを定めて撃ったために時間的感覚は大分空いてしまう。

だが最初の頃に比べてその精度は大幅に向上していた。

しかしそれが命中するのは今までの敵ぐらいであっただろう。

現に彼女は蛇行を繰り返し、狙いを定められないように移動を行い、3発の銃弾は虚しく彼女の後方へと流れた。

距離は縮まった。だがそれでもまで彼女の間合いには入らない。

下手に動けば距離が縮まってしまうことを悟っている彼は動かず撃ち続ける。

惜しいものは掠り、それ以外のものは後方へと流れる。

致命的なものは一発として当たらず、距離だけが無くなっていく。

そして彼女が間合いを勝ち取る。

突き出されるは神速の刃。

今までの速度、腕から流れる加速、踏み込みの力強さ。それを一連として全てを紡ぐ。

彼女の流派である技『神天一式』

主眼は奇襲。そうでもなければ最大加速が生まれずにただの刺突となってしまう。

絶対的な距離が必要な戦闘には不向きな攻撃。だがその速度と一撃はまさに最大のものといえる。

しかし彼はそれを読んでいた。

狙っていた場所は心臓。例え避けられたとしても他の場所に当たるかもしれない命中率がいい場所。

避けられないと分かっている彼は心臓の前にあるものを置く。

置かれた銃に刃が当たる。

火花を散らして銃が吹き飛び、彼女の体勢が大きく崩れる。

全力で放っただけに体重移動なども全て攻撃に費やされている。それだけに姿勢を直すのにも同じだけの労力がいる。

反対に彼は防御だけに力を入れていたためにすぐに体勢を立て直す。

同時に攻勢へと転ずる。

接近とはいえない超接近。ほぼ触れ合う程度まで近づいているものに対してどうやって攻撃を行うか。

彼は肩を彼女に触れ、足を地面に激しく叩きつける。震脚を効かせた当身。

衝撃を一点に凝縮した一撃。

彼女は大きく吹っ飛び、受け身もまともに取れずに地面に落ちる。

当身による一撃は彼女の胸に命中、その所為で呼吸器官が一時的に使用不能となった。

「ぐ、が・・」

咽る彼女を尻目に彼は吹き飛んでいた銃を回収するために急ぐ。

先程のことを二度せよといわれても彼に出来る自信は無い。

同じことが二度も通用するとは思えないからだ。

銃を拾い上げると同時に苦しんでいる彼女に照準。

迷うことなく撃鉄を降ろす。

銃弾は確実に彼女のいた地点を撃ち抜いた。

彼女自身は銃弾が進んだ道程を銃弾よりも数瞬早く駆けていた。

彼の動揺が彼女に間合いへと辿り着けるだけの時間を与えてしまった。

放たれた槍撃は先程と同じ『神天一式』それを防ぐ手段は先程と同じ方法しかない。

盾として置かれた銃に放たれた槍は寸分違わずに命中し、そしてお互いを弾き飛ばした。

先程と違うことはお互いに操者が体勢を全く崩していないこと。

彼女は最初から槍を捨てる気で『神天一式』を放ったのだ。だからそれを先に予想していた彼女のほうが動くのが早い。

当身の影響で足が縺れたのか彼女はそのまま彼にぶつかり、お互いに転び、倒れる。

相手に馬乗りになったのは彼女のほうだった。

「悪いな、私はまだ死にたくないのだ」

この台詞は今までに会ってきた敵に告げていた台詞。

自分の罪を正当化するために彼女は敵に懺悔している。

「俺だってまだ死にたくないんでな」

だがその台詞に相手が返してきたことは初めてだった。

動きが止まったのは両者同じ。再び動き出すためには少しばかりの時間と会話が必要。

彼と彼女は長い時間を掛けて道を交差させ、これからの行動を考える。

道は繋がった・・・・。



    残り時間【97時間54分】